アクアポニックスによる里芋ジャングルの作り方

アクアポニックスによる栽培記録

 観賞用として見応えのある、人の背丈を超える巨大な里芋の茎と葉の茂らせ方についてお話しします。

 イメージは、このような感じです。

120リットルタライを植木鉢代わりにしています。120リットルタライは、長辺約80センチ、短辺約60センチの大きさです。

 筆者の経験上、里芋は、アクアポニックスと相性が良い野菜です。

 まず、一般的な里芋の栽培方法について、お話ししします。

 春、里芋を丸のまま畑の土に埋めます。

 丸のままというのは、里芋の身というか芋そのものを、ジャガイモを植える際のようには切らずに、丸ごと一つそのままという意味です。

写真はジャガイモです。ジャガイモは丸のままではなく、芽のあるブロック単位に切って植えます。

 埋められた里芋は、やがて根を張り、芽を出し、芽は葉になって成長していきます。

 元になった里芋自身は、土中で養分を蓄え太ります。

 やがて、その里芋から、瘤のように小さな里芋が生えてきます。

 最初に埋めた里芋が親芋で、瘤が子芋です。

 子芋が、将来、収穫する芋にあたります。

 親芋から養分を分けてもらい、子芋も、土中で太っていきます。

 秋から冬にかけて、里芋の葉が黄色く枯れてきた頃に、葉を刈り、親芋と子芋を掘り返します。

 大きくなった親芋には、最初に埋めた親芋の大きさと同じくらいの大きさの子芋が、群がるように、ごつごつと沢山ついています。

赤丸が親芋、青丸が子芋です。

 子芋の一つ一つを、親芋からもぎ取って収穫です。

 場合によると、子芋からは、さらに小さな孫芋が生えています。

 一般的に、親芋は、堅くて普通の調理方法では食べられないため、捨ててしまいます。タケノコが大きくなりすぎて竹になったら、堅くて食べられないのと似たような話です。食べるのは、子芋の部分です。

 収穫された子芋の一部を残しておき、翌年、次の親芋として使います。

 以上を、毎年繰り返すのが、一般的な里芋栽培の一連のサイクルです。

 里芋専門の農家さんの畑には、大抵、スプリンクラーが設置されています。

 里芋は、水切れを特に嫌う植物です。

 土中の水が切れると、収量や品質が落ちてしまうため、適宜、スプリンクラーで畑に水を撒いて、里芋に水を与えています。

 以前、同僚の農業改良普及員(通称、普及員。農業改良普及員とは、農家さんに農業を指導する役目の国や県の職員、要するに農家の先生です)から聞いた話で、逆説的になりますが、「里芋栽培にとって、水不足の年は怖くないんだ。怖いのは晴れがない日照不足の年だ。水は撒けばいいけれど、太陽の代わりは誰もできない」というような話を聞き、なるほどと思った覚えがあります。

 ところで、買ってきたジャガイモを保管していたら、料理する前に芽が出てしまっていたという経験はありませんか?

芽が出たジャガイモ

 里芋も同じです。いつまでも食べずに置いておくと、腐ってしまわない限りは、大概、芽や根が出てきます。

芽が出た里芋

 あるとき、そんな芽が出た里芋を、アクアポニックスのポンプ槽に投げ込んでおきました。

『配管の製作』の際に掲載した図面の再掲です。ポンプ槽とは、Pと書かれた槽のことです。
ポンプ槽に芽が出た里芋を投げ込んで放置しました。

 特に育てて食べようという意図ではなく、芽と根が出てしまって可哀想なので、水をあげよう程度のつもりでした。

 それ以上は特に何も世話はせず、基本、放置をしたままでしたが、里芋は勝手に葉を伸ばして、ジャングルのような風情になりました。

里芋の芽が育った様子です。これだけでもちよっとしたミニジャングルです。
そのまま放置したところジャングルになりました。横の水色のタライは、120リットルタライです。

 食べるつもりで育てていたのではなかったので、冬になり、枯れた葉を切り取っただけで、親芋も子芋も、そのまま水中に浸けたまま、さらに放置をしていたところ、翌春になり、再び、芽が出て、成長を始めました。

 見ると、ポンプ槽内では、親芋と子芋が窮屈そうにしています。

 さすがにそのまま、二年目の栽培に入るには手狭だったので親芋と子芋を株分けし、今度は培地のないポンプ槽ではなく、グローベッド槽の砂利の中に植え替えました。

 もう少し正確にお話をすると、グローベッド槽の水位を上げて砂利が水没するように水を張り、作物を植えるのではなく、ザリガニを飼育していた槽があったので、その槽を利用したのです。

ザリガニ飼育槽に再び芽が出始めた親芋を投げ込みました。この後、一晩でザリガニに丸かじりにされました。

 ザリガニによる食害を受けないように、ザリガニの侵入を阻む壁として籠を置き、籠の中に親芋を置きました。

壁代わりに籠を置き、その中に里芋を置きました。埋めはせず、ただ置いただけです。籠が浮かないよう、重り代わりに石も入れてあります。

 ところで、里芋の一般的な栽培方法の話で、親芋は捨て、翌年、子芋を次の親芋として使うという話をしました。

 農家さんの場合、基本的に食べられない親芋は捨ててしまいますが、実は親芋は、この段階でもまだ生きています。

 観葉植物にクワズイモ(食わず芋)という多年生の里芋科クワズイモ属の植物がありますが、それと同じで、食用の里芋も本当は多年生です。

 再び、植えれば、翌年も次の子芋が瘤のように生えてくるのですが、農作業の手間的にも収量的にも効率が悪くなるため破棄されます。

 筆者の場合は、出荷するために里芋栽培をしているわけではないので、数が多いわけではなく、大した手間もかからないので特に気にしませんでした。

 通常畑で栽培されている里芋の茎の背丈は、一メートル程度です。

 葉の重さで垂れ下がっているため、まっすぐ伸ばせば、もっと長いかも知れませんが、人の背より里芋の背丈が高くなることは、なかなか、ありません。

 一方、親芋を二年目も親芋として使用した今回の場合は、もともとの親芋の大きさが、子芋を親芋として使う通常の親芋よりも大きい状態です。

 親芋の大きさに合わせて、最初に生えてくる芽の大きさも大きくなります。

 二年目の成長した様子はこのような感じです。昨年よりも、ジャングルが繁茂しています。

自転車と比較して大きさのイメージがわかると思います。写真の上端からタライの上端まで約60センチです。

 この状態でも通常の里芋よりは、大きい様子がわかると思います。

一番大きい葉の縦は約70センチでした。
同じ葉の横は約50センチでした。10センチと50センチの外側にも5センチ程度、葉があります。

 株の状態は、このような感じです。

籠の隙間を抜けた根が、砂利の仲間で伸びています。その力で、籠はひしゃげてしまっています。

 この年も収穫をせず、葉を刈り取っただけの状態で、濾過槽内でそのまま冬を越させてみました。

 今年は、三年目に当たります。

 特に親芋と子芋を分割させることなく、そのまま完全に放置していた株から、春になり、親芋からも子芋からも続々と芽が出てきました。

 結果が、これです。

地面からタライの上端まで約70センチです。手前のタライの茂みの上端まで約220センチ、奥のタライの茂みの上端まで約260センチです。差し引きで高さは手前が約150センチ、奥が約190センチです。

 ジャングル化の様子が驚異的です。

 完全に里芋槽になってしまいましたが、もともとザリガニ飼育槽は、ザリガニ飼育槽から溢れた水を魚飼育槽に流下させるため、下にブロックを置き、高い位置に置いてありました。

 そのため、本当の地面から里芋の葉の先端までは三メートル近くあります。

 地面からブロック上のタライの上端までの約70センチを除いたとしても、人の背丈ほどある里芋の高さがわかると思います。

地面から120リットルタライの上端まで、約70センチです。
手前の葉の上端まで、約220センチです。差し引きで約150センチです。

 途中で折れて倒れてしまっている茎もあります。

 伸びすぎた茎が、自分の葉の重さで折れたためです。

 折れた葉を刈り取っても、次々と新しい葉が伸びてくるため、折れ跡はすぐに目立たなくなってしまいます。

 上に阻まれ、伸びきれずに、細いまま枯れている茎もありますが、全体としては、良好な成長です。

 観賞用としては、ただの里芋とは思えない圧巻の姿ではないでしょうか。

 ところで、『農業あるある』なお話を一つします。

 サツマイモなど芋類の場合、あまり葉や茎を茂らせすぎると、栄養がそちらにとられてしまい、肝心の芋が大きく育たないという『あるある話』です。

 はたして、今回の巨大里芋の場合はどうでしょうか?

 その答えは、また後日。

 ひょっとしたら、このまま、四年目に突入させるかも知れませんし、さすがに株が大きくなりすぎたので、株分けするため、今年は掘り起こすかも知れません。

 いつか、収穫をした際には、答えあわせができると思います。

 もし、今年、里芋の栽培に取り組んでいて、来年、巨大な里芋のジャングルをつくりたいと思った方は、ぜひ、親芋を捨てずにとって置いてみてください。

 うまくいけば、見上げるような里芋の茂みがつくれます。