ここでは、アクアポニックスの基本形として、上部式グローベッドの作成方法を紹介します。
各写真は、それぞれ撮影時期がばらばらの写真の中から、今回の説明に使えそうな物を選び出して掲載しています。資材の色や形に統一されていない部分がありますが、ご了承ください。
まず、13リットルコンテナボックスに穴を開けます。
ポンプで汲み上げるホースの口径よりも総面積が大きくなるように、穴を複数で開けてください。
万が一、何らかの理由で一方の穴が塞がっても、別の穴が開いていれば、濾過槽内に水が溜まって、やがて上から水が溢れるような事態になること避けられるためです。
穴は、大きい穴を少なめに開けても、小さい穴を多めに開けても、どちらでも構いません。
濾過槽内への水の流入はポンプで力強く行われますが、濾過槽から下へ落ちる排水は、自然流下のため、流入時よりもスピードは遅くなります。
穴の大きさはともかくとして、排水側の穴の合計面積は、流入するホースの面積よりも、十分に大きくしてください。
流入スピードが、排水スピードを上回ると、上から水が溢れてしまいます。
ポンプの能力で変動しますが、筆者のシステムでは、感覚として口径13mmのホースで水を流入させた場合、自然流下させるためには、直径20mm程度の穴が必要です。
写真は開けた穴に、直径16mm×直径13mmの異径ソケットを差し込んだ例です。
同サイズのコンテナボックスを重ねる場合は、上下がぴたりとはまるようになっているため問題ありませんが、コンテナボックスを、例えば120リットルタライのような別の容器の上に置く場合は、コンテナボックスの穴から流れ出る水が、容器の底面を伝って容器外に滴って流れ出る場合があります。
穴にソケットをはめておれば、水は、異径ソケット内を流下しますので、異径ソケットの出口さえ、下にする容器の範囲内に収まっていれば、容器の底面を伝わってしまう心配はありません。
もちろん、底面を伝わって、水が外に流れ出る恐れがない場合は、特に異径ソケットは必要ありません。
写真では、異径ソケットの高さの分、容器内に水が貯まらないように、異径ソケットの入口側を斜めに切り落として、排水口の高さを下げていますが、この加工は特に行わなくても問題ありません。
異径ソケットではなくて、バルブソケットを使用しても大丈夫です。
異径ソケットやバルブソケットをつけておくと、作物栽培槽(グローベッド)と魚飼育槽を単純に垂直に設置するだけではなく、塩ビ管を接続して横方向に水を誘導することが可能になります。
グローベッドの横連結については、別項でお話しします。
コンテナボックス内に、籠を置きます。
籠を置く理由は、コンテナボックスの底面や壁面と軽石の間に隙間をつくり、水が流れやすくするためです。
A4の書類を整理するための籠を使用する場合、写真のようにコンテナボックスの上から籠の上部がはみ出てしまうため、コンテナボックスを複数段、重ねることはできなくなります。
キッチンで使用する水切り籠を使用する場合は、コンテナボックス内にうまく収まるため、コンテナボックスを複数段積み重ねての使用が可能です。
A4ファイル籠もキッチン水切り籠も、たまたま筆者が使用している物がそうだというだけで、まったく同じ籠を使う必要はありません。
何か適当な物を使用して、特に軽石とコンテナボックスの底面に隙間をつくる様にして下さい。
籠を置いたら、籠の上にネットをかぶせます。
直接、籠に濾材を入れると、細かい粒が、網目を抜けて零れてしまうため、そうならないよう防ぐ措置です。
濾材が網目より大きい場合は、ネットは特になくても問題ありません。
防虫ネットでなく、タマネギが入っている赤い網袋や、破れた網戸の網などを再利用しても構いません。
一枚では、網目が大きすぎる場合は、折りたたむか複数重ねて、網の目合いが軽石よりも小さくなるように工夫して下さい。
ネットの上に、軽石を敷きます。
買ったままの軽石は、細かい白い汚れが付いていますので、洗ってから敷くか、敷いてから水をかけて洗って下さい。
筆者は、水がもったいないので、水をかける際には下に容器を置いて水を受け、数日後に受けた水の汚れが沈殿して上水が澄んだら、すくって補給水に再利用しています。
軽石ではなく、魚飼育用の大磯砂利を使用しても構いません。
大磯砂利の欠点は、重たい点です。
なるべく、腰に負担をかけたくないので、筆者は軽石を愛用しています。
野菜をプランター栽培する場合は、通常、栽培用の土は一度使用すると捨てなければなりませんが、軽石にしろ、大磯砂利にしろ、洗って日に当ててよく殺菌して使えば、繰り返し使えるという利点があります。
写真で、60センチメートル水槽の上に、グローベッドを置いています。
ポンプで水槽の水を汲み上げて、常時、濾材に水がかかるようにすれば、一通り完成です。
後は、グローベッドに、種を蒔くなり、苗を植えるなりするだけです。
グローベッドの重量が、直接水槽の縁にかからないように、金網を置いて重量が分散するようにしてから、コンテナボックスを置いています。
とはいうものの、本来水槽の縁には、重量物を置くべきではないので、もし、同じことをする場合は、自己責任でお願いします。
重みで水槽のガラスが割れてしまうと、中の水が一斉に流れ出して、大惨事を招きます。
ガラス水槽より、タライの方が重量には耐えられます。
濾過槽の重さに、水槽が耐えられない可能性があるという欠点の他にも、上部式グローベッドには、実はいくつか欠点があります。
中でも一番の欠点は、魚の排泄物からつくられる肥料成分をすべて使い尽くすためには、水槽の上に置ける程度のグローベッドの植物量では、圧倒的に植物の面積が足りない点です。
アクアポニクスの理想型である、水替えをせず、減った水を時々追加するだけですむ状態の実現は、上部式グローベッド単独では、かなり困難です。どうしても、吸収しきれなかった硝酸態窒素が蓄積してしまうため、時には水替えが必要です。
とはいえ、水替えの頻度は格段に減らすことができるため、それだけでもアクアポニックスに取り組む価値は、十分にあります。
上の写真は、見てのとおりで、結構な量の葉物野菜なのですが、これでも肥料成分の量に対して、植物の量が足りていません。
逆を言えば、たった一つ、魚を飼育する容器があれば、相当な量の野菜をつくれるポテンシャルが、アクアポニックスにはあるということです。
自給自足は難しくても、半自給自足であれば可能です。
さて、次回は、上部式グローベッドの欠点を筆者なりに対策した、横連結式グローベッドについてお話しします。
かにかに