市販の材料でつくるアクアポニックスの製作イメージ

市販の材料でつくる初心者向けの簡単なアクアポニックスの製作

 本サイトのメインテーマは、『アクアポニックスの紹介』です。

『アクアポニックスとはなんぞや?』という、そもそもの言葉すら知らない方に対して、まず一般的なアクアポニックスの説明を行い、続いて筆者が実際に行っているアクアポニックスの方法について紹介するという構成の予定です。

 ですから、内容は初心者向けのつもりです。

 にもかかわらず、いきなり『容器にドリルで穴を開けろ』という、第一章、第二章でお話ししたこれまでの工作の紹介は、アクアポニックスにお気軽に手を出してもらうためには、ハードルが高すぎました。

 ドリルがあれば、できる工作の幅が広がり、作業も圧倒的に早くなるので、今後のアクアポニックスシステムの規模拡大に手戻りなく工作を進めるためには『良かれ』と思っていたのですが、『今後どうするかはともかく、とりあえず試しにアクアポニックスをやってみたい』という方に対しては不親切でした。

 筆者も初めてアクアポニックスを試みた際には、ドリルなど持っておらず、工作といっても、塩ビ管をノコギリで適当な長さに切断するだけでした。

 ですから、本サイトでも、まずはそこから始めようと思い、第一章の前に、第0章を追加しました。

 第0章では、市販されている、アクアポニックスの材料として使える物を買ってきて、プラモデルのように組み合わせて、簡単なアクアポニックスシステムを、試しにつくります。

 筆者が、始めてつくってみたアクアポニックスシステムは、既に分解してなくなってしまったので、当時のシステムに、その後、筆者がアクアポニックスを続けていく上で思い付いたり、知ったりした便利な工夫を組み合わせて、もし、今、筆者が穴を開けずに市販品だけでアクアポニックスシステムをつくるならばこうする、という基本形をお示ししたいと思います。

 なので、今回は工具としてドリルは使いません。

 ただし、塩ビ管を適当な長さに切断するために、ノコギリだけは一丁用意してください。

 おもちゃのような、安物で構いません。

 とりあえず、一回きりの工作用に使い捨てのつもりで、100円ショップで、100円または200円プラス消費税程度で売られているノコギリで十分です。

 塩ビ管を数回切断するだけですので、実際には使い捨てにはならず、以後も十分に使えます。

 カット済みの塩ビ管を必要数購入する場合より、長尺の塩ビ管を自分で切断する方が遙かに安上がりなので、200円プラス消費税程度であれば、買ってしまっても簡単に元が取れます。

 逆に、もし、家に大工さんが使うような本格的な木工用ノコギリがあっても、もったいないので、そのノコギリは使ってはいけません。

 ノコギリの刃を痛めてしまいますので、カット済みの塩ビ管を買った方が、むしろ安上がりだったという結果になってしまいます。

 ホームセンターによっては、自分で切断作業をするならば、無料で工具を貸してくれるお店もありますので、そのようなサービスを利用しても良いでしょう。

 さて、次の図は、筆者が今つくるならばこうするという、穴開け加工なしでつくるアクアポニックスシステムの基本形です。

穴開け加工なしでつくるアクアポニックスの基本形模式図

 図の左下に、壁の高さが低い、平たい形の魚の飼育容器があり、赤い魚が泳いでいます。

 Pはポンプです。青い矢印は、水の流れを表しています。

 魚飼育容器の水をポンプで吸い上げて、図の右上にあるグローベッド、(作物栽培槽)に、上から注いでいます。

 注がれた水は、濾過されながら砂利の中を通過し、グローベッド左下の穴から、もとあった魚飼育水容器に流下するという流れで、循環しています。

 グローベッドの下にある、丸が三つある四角形は、建築資材の重量コンクリートブロックを二段ずつ積み重ねているイメージです。

 積みブロックの高さが何段になるかは、魚飼育容器の壁の高さ次第で変化しますが、あまり高くなりすぎると危険なため、せめて二段程度の積み上げでおさまる高さの飼育容器が良いと思います。

 図を描きながら魚飼育容器として筆者がイメージしていたのは、やはり建築資材の一種で、人力でセメントと砂を混ぜる際に使用する、トロ舟(とろぶね)です。

 トロ舟は、近年、メダカを飼育されている方が、池の代わりによく利用しています。

 グローベッド用の容器は、120リットルまたは60リットルのタライの使用をイメージしています。

 図の中央部、グローベッド左側にある、下向きの赤い矢印から青い矢印の部分を拡大した様子が次の図です。

グローベッド排水部拡大図

 灰色の正方形が二つくっついた図形は、口径16mmの塩ビ管と口径13mmの塩ビ管を接続する際に使う継手で、異径ソケットです。

 筆者が、いつも利用しているメーカーの120リットルまたは60リットルのタライの良いところは、もともと開けられている排水口に、この口径16mm×口径13mm異径ソケットが、ぴったりとはまる点です。

 逆さになった網目模様の半円形の図形は、プラスチック製の丸い籠です。

 グローベッド内に砂利を入れる際、何もしないと異型ソケット内に砂利が入って排水口が詰まってしまうため、逆さにした籠で蓋をして、砂利は通れないけれど、網の隙間から水は通れるという状態をつくります。

 グローベッドの砂利の中を通過して集まってきた水は、籠の隙間を抜け、異型ソケットの中を通り抜けて、下に流れるという仕組みです。異型ソケットの口径13mm側には、短く切った同口径の塩ビ管を挿して、流下する水が水面にぶつかった際の水跳ねを和らげます。

 その際、水音を消そうとして、塩ビ管の先端を魚飼育容器の水面に触れさせてはいけません。流下しようとする水の出口を、水面でふさいでしまうことになり、グローベッドから流れる水の勢いが弱められてしまいます。

 もし、ポンプでグローベッドに吸い上げる水の量よりも、同じ時間に排水口から自然に流れ出す水の量が少なくなるようだと、水はどんどんグローベッド内に溜まって、やがて上から床にあふれ出すという大惨事を引き起こします。

 筆者が初期に製作したアクアポニックスシステムでは、排水口の工夫は、砂利が流れ込まないように、籠でカバーをするところまででした。

 もし、今つくるのであればさらに加える一工夫として、逆さにした籠の上に、頭の先が砂利より少し上に出るくらいの長さに切断した、塩ビ管を立てます。

 魚飼育容器から、グローベッドへポンプで吸い上げられた水は、グローベッドの砂利の中を、排水口方面へ吸い寄せられるように流れていきます。

 その過程で水中に含まれている何らかの固形物、魚の糞であったり、植物の葉や根の残骸であったり、水中に生えた苔の破片であったり、飛んできた土やゴミなど、そういったものが、やがて砂利と砂利の隙間に詰まって水をせき止め、いつかは籠の編み目を抜けていく水の量が、魚飼育容器からグローベッドへポンプで吸い上げて流入する水の量より少なくなってしまう日がやってきます。

 そうなると、先ほどお話ししたように、グローベッドの上から水があふれだす緊急事態です。

 もし、籠の上に塩ビ管が一本立ててあれば、籠の編み目を抜けられずにグローベッド内に溜まりだした水は、やがて立てられた塩ビ管の上の高さまで溜まった際、塩ビ管の中を流下して真上から籠を通過し、排水口から流れだせます。

 図の赤い矢印が意味しているのは、そのような水の流れです。溜まった水の緊急避難ルートの役割です。

 グローベッド容器の縁から水があふれ出す事態になる前に、立てた塩ビ管に、水が吸い込まれていく様子に気がつけるので、グローベッドの砂利が目詰まりを起こしてしまっているのだとわかります。

 砂利を取り出して、洗って、目詰まりを解消してください。

 以上が、穴を開けずに市販品を集めてつくる、初心者向けの簡単なアクアポニックスの基本形です。

 気をつけなければいけない点は、いつの日かグローベッドの砂利は目詰まりをしてしまうので、そうならないよう、時々は砂利を洗ってやる必要があることです。

 実は、目詰まりを起こす原因は、もう一つあります。

 伸びた作物の根です。

 グローベッド内で伸びた根が、籠の編み目を抜け、流れに乗り、排水口の中へ伸びていく場合があります。

 少量であれば問題はありませんが、あまり多くなると、排水口の断面積が狭くなるので、やはり、流れが阻害されて、グローベッド内に水が溜まります。

 砂利同士の隙間ではなく、肝心の排水口の穴そのものがふさがれてしまうので、この場合は、緊急用の水の抜け道である塩ビ管が立ててあっても、水は溜まり続けてしまいます。

 できれば、一度何らかの作物をつくった後には、一度グローベッド内の砂利を出して水洗いをし、またベッドに戻すという作業をしてください。

 ところで、もし、魚飼育容器の水が、流れずにどんどんグローベッド内に溜まってしまうと、魚飼育容器内の水は、どうなるでしょうか?

 循環して戻ってくる水が減るのですから、魚飼育容器内の水もまた、どんどん減ってしまいます。

 水の減少は、砂利が目詰まりをして水がグローベッド内に溜まってしまう他にも、単純に蒸発したり、作物が吸い上げても発生します。

 いずれにしても、魚飼育容器内の水が減り過ぎると、ポンプが空回りを起こして壊れたり、魚が死んでしまう事態が考えられます。

 そうならないようにする対策というか工夫については、次回、お話をいたします。