アクアポニックスを設置する場所

市販の材料でつくる初心者向けの簡単なアクアポニックスの製作

 市販の材料でつくる初心者向けの簡単なアクアポニックスの、実際の製作に入ります。

 製作に先立ち、アクアポニックスシステムをどこに置くか、具体的な設置場所を決めなければなりません。

 もしかしたら、本サイトの別の項でも同様に設置場所の説明をしているかも知れませんが、大切な話なので何度でも繰り返します。

 設置場所を決めるにあたっては、いくつか条件がありますので列記します。

・コンセントの差し込み口が近くにあること。

・水道の蛇口が近くにあること。

・水の排水先が近くにあること。

・水に濡れても大丈夫な場所であること。

・概ね、平らな場所であること。

・床(または地面)が、頑丈な場所であること。

・作物に、長時間、日が当たる場所であること。

・できれば、屋外であること。

・アクアポニックスシステムを置いた後、システムの周囲(少なくとも、背面以外の前面と両脇の三方向)に、人が動き回れるスペースを確保できること。

 などです。

 コンセントの差し込み口と水道の蛇口が必要な理由は、言うまでもないでしょう。ポンプを動かすためには電源が必要ですし、容器に水を入れるためには水道が必要です。

 理想は、すぐ近くに両方揃うことですが、もしどちらか一方しか近くにはできないようでしたら、電源の差し込み口に近い置き場をお勧めします。

 電源も水道も、どちらも延長コードや水道用ホースを利用して、本体から遠い場所まで引っ張っていくことはできますが、ホースは雨に濡れても構いませんが、電源の延長コードは、例え防水タイプを使用していたとして、できれば水に濡らしたくはありません。

 したがって、軒下の屋外用電源の差し込み口に、コードを延長せずに、コンセントを差し込める場所が、優先順位としては上になります。

 水の排水先が近くにあると良い理由は、例えば、メンテナンス時に濾材の砂利を洗ったり、タライの水を空にしたとして、その水をそのまま床や地面に流しても問題ない場所であれば構いませんが、大抵の場合、そうではなく、どこかに排水する必要がありますので、水の排水先は近くにあったほうが、便利だという話です。

 屋外用の蛇口の近くだと、排水先も考えられていると思いますので、水の出し入れ両方の問題が解決できるため、理想的です。

 地面や床が水に濡れても大丈夫な場所であることがなぜ良いかは言わずもがなです。

 排水をそのまま床にこぼす真似はしなくても、例えば、ポンプからグローベッドに水を送る配管が外れたり、グローベッドが詰まって、容器から水が溢れだしたりという事故が、起こらないとは限りません。

 魚が跳ねて、水飛沫が周辺に飛び散る場合も考えられます。

 万が一、そのような事態が発生しても、問題ない場所である必要があります。

 地面や床が、概ね、平らな場所であることも大切です。

 タライを地面やブロックの上に置いた際、水平ではなく、斜めになっていると、容器の四辺のどちらか一方が、他より低くなってしまいます。

 水面から、容器の縁までの高さが、その場所だけ短くなってしまいますので、何かの拍子に排水口が詰まった場合、水は、低い部分から溢れ出します。

『概ね平ら』という言い方をしたのは、完全な水平ではなく、わずかに排水口がある側を下げておき、グローベッド内で底に到達した水を、排水口に向かって自然に流下させるという工夫もあるためです。

 また、あえて、容器の一方を下げておくことで、水が溢れ出す場所を事前に決めておき、対策をとりやすくするという場合もあります。

 設置場所が平らでない場合、容器や中の水、砂利などの重量は、容器の下の面に対して均等ではなく、若干下がった部分に対して、多くかかります。

 タライの場合は、あまりない事態ですが、例えば容器がガラス水槽である場合は、均等ではなく、偏った力が底面にかかると、その部分で割れ、水が漏れる事故に繋がる場合もありますので、注意が必要です。

 下が平らである必要と合わせて、下が頑丈である点も重要です。

 アクアポニックスシステムを設置しようとすると、どうしても水や砂利が入った容器やブロックを、いくつもまとめて一つの場所に置くことになります。

 ちょっと想像するだけでも、アクアポニックスシステムの全体重量が、数百キログラムから1トンを超える単位になることは明らかです。

 例えば、120リットルタライ一杯に水を溜めた場合、水1リットルは1キログラムの重量ですので、それだけで120キログラムです。

 そのような重量物をまとめて一つの場所に置こうというのですから、下敷きにされる床や地面は押しつぶされます。

 地面にシャベルで穴を掘ったり、その掘った穴を埋めたりした経験がある方は思い当たるかも知れませんが、地面に穴を掘り、掘って出た土を穴の脇に山にして見比べた場合、土の山の体積は掘られた穴の体積よりも大きくなります。

 その理由は、掘る前の土は、押し固められて内部に空気はあまり含まれていなかったのに対し、掘られた土は、空気と混ざり、ふんわりとばらけた状態になっているためです。見た目上の体積は大きくなります。

 では、その掘った穴に、掘り出した土の山を戻して元通りに埋めようとした場合、穴に土を入れ、ぎゅうぎゅうと足で踏み固めたとしても、穴があった場所は元通りの平らな地面とはならず、どうしてもこんもりと盛り上がってしまいます。

 掘り出した土を、掘り出した場所に戻しただけなので、平らになりそうですが、足で踏んだぐらいの力では、空気が混ざった土を十分に押しつぶして土から中の空気を追い出しきることができないので、どうしても盛り上がってしまうわけです。

 けれども、毎日踏み固めていれば、いつかは空気も抜け、もとの地面の高さに戻ります。

 さらに、踏み固め続ければ、逆に周辺よりも低くなってしまうでしょう。

 同じように、アクアポニックスシステムを地面の上に置いた場合、システムに踏まれた土は沈みます。

 どの程度沈むかは、もともとの土の状態やシステム全体の重量によって変わるので一概には言えませんが、沈み方によっては、最初設置したアクアポニックスシステムの配管が外れたり、水の勾配が変わったりという事態もあり得ます。システム全体が一様に沈むのではなく、重い場所ほど深く沈んだ場合は特にそうなる恐れがあります。

 流れる水の向きが変わってしまうと、システム全体を置き直す必要がでる可能性もありますので、アクアポニックスシステムの置き場所は、下が頑丈な場所である点が重要です。例えば、コンクリート製の床であれば理想的です。

 逆にもし、どうしても床や地面の固さが望めない場所に置かざるを得ない場合は、システムのどこか一箇所だけが沈みすぎてしまわないよう、まず下にコンパネの板などを敷き、その上にアクアポニックスシステムを置き、全体がなるべく一様に沈むようにする、といった工夫が必要です。

 気をつけなければならない点は、重量です。

 下が土ならば、沈むだけの話ですが、例えばウッドデッキの上に設置した場合は、重みでウッドデッキそのものが壊れてしまうかも知れません。

 まさかとは思いますが、ベランダから手が届くという理由で、屋根の上に設置をするような真似は、絶対にしないでください。

 ウッドデッキが壊れたぐらいではすまない悲劇が訪れます。

 アクアポニックスシステムの置き場所は、固くて平らで濡れても平気で、重量に耐えられる設置場所が一番です。

 だからといって、暗い地下室の中であってはいけません。

 言うまでもありませんが、植物は成長のために日光が必要です。

 なるべく、長時間、グローベッドの作物に日が当たるようにしてください。

 逆に魚飼育槽については、直射日光が当たりすぎない場所が理想的です。

 真夏など、水が暖まりすぎてお湯になってしまうと、魚が死んで、煮魚になってしまいます。

 日当たりの良さと悪さを両立させるのは難しいですが、例えば魚飼育槽には、

 寒冷紗で覆いをかけるとか、魚飼育槽と作物栽培槽の距離を放して、接続する配管を長くして、日の当たる場所と当たらない場所をつなげるとか、そのような方法も考えられます。

 先程暗い地下室はやめてという話をしましたが、植物工場のように煌煌とLEDライトで明かりをともすのであれば不可能ではありません。

 とはいえ、排水先とか、こもる湿気とか、電気代とか、色々と別の不都合が予想されます。

 できれば日当たりの良い屋外への設置や、屋内だとしても温室の中への設置をお勧めします。

 アクアポニックスシステムは、一度設置したら、それでおしまいではありません。

 作物が育てば収穫の作業が必要ですし、枯れた葉の処分や、植え替えといった作業もでてきます。

 グローベッドの砂利を取り出して洗ったり、外れた配管の接続や、魚飼育槽の掃除、何か槽と槽の隙間に落とした物を手を伸ばして拾うような事態も考えられます。

 そのような様々な作業を考えると、アクアポニックスシステムを置いた後、システムの周囲には自由に人が動き回れるスペースが必要です。

 理想は、アイランドキッチンのように周囲が解放されている状態ですが、そこまで広々と空間を使うことはなかなか難しいので、背面のみは壁につけるけれども、前面と両脇の三方向は、人が動き回れるスペースを確保できると望ましいです。最低でも、前面とどちらか一方の脇は確保したいです。

 背面と両脇を壁に囲まれた、行き止まりのスペースに隙間なく設置してしまうと、見た目の収まりは良いかも知れませんが、日々のお世話作業が著しく不便になります。

 ABCに分けた次の図の例のように、必ずしも、左に魚飼育槽、右に植物栽培槽、中央にポンプ槽といった並びである必要はありません。

 配管の長さや、ブロックの高さ、槽を並べる順番などを適宜工夫して、なるべくアクアポニックスの周囲どこからでも、必要に応じて各槽の奥まで手を伸ばせば届くような状況が確保できると、色々と便利です。

 さて、設置場所の話だけで、大分、長くなってしまいました。

 次回こそ、実際の製作の話に入ります。