さて、実際の製作です。
前回、設置場所についてお話ししましたので、どこに設置するか具体的な場所は決まっている前提として話を進めます。
今回はグローベッド2基タイプの製作です。
模式図は、以下のとおりです。
必要な材料は、以下のとおりです。以前の記事(市販の材料でつくる初心者向けの簡単なアクアポニックスの製作に必要な材料とは)から再掲します。
A.魚飼育槽
①60リットルタライ×1個 (120リットルタライでも可)
②重量ブロック×4個 (120リットルタライの場合は、8個)
③口径16mm×口径13mm塩ビ管異径ソケット×1個
④塩ビ管 直管 口径16mm
⑤塩ビ管 直管 口径13mm
➅金網 または 防虫ネット
B.作物栽培槽
①60リットルタライ×1個 (120リットルタライでも可)
②重量ブロック×6個 (120リットルタライの場合は、8個)
③口径16mm×口径13mm塩ビ管異径ソケット×1個
④塩ビ管 直管 口径13mm
⑤丸籠×1個
⑥軽石
C.ポンプ槽
①80リットルトロ舟×1個 (22リットルコンテナボックスでも可)
②水中ポンプ×1基
③水中ポンプ用ホース
④塩ビ管 直管 口径13mm
⑤塩ビ管 T字継手 口径13mm×1個
⑥塩ビ管 90°エルボ 口径13mm×2個
⑦丸籠×1個
サイズが大きな材料として、魚飼育槽と作物栽培槽に使う60リットルタライ、ポンプ槽に使う80リットルトロ舟があります。
その他の材料は、この三つの容器の中や下、上に置かれる物になりますので、この三つの容器を並べた大きさが、製作するアクアポニックスシステムの大まかな大きさになります。
まず、実際の設置場所に三つの容器を並べて、大きさのイメージを把握してください。
周囲に、アクアポニックスシステムが稼働した後、日常的に管理をするために動き回れるスペースが存在しますか?
三つの容器を、それぞれ縦置きにしたり横置きにしたりして、どのような並べ方だと、一番管理しやすく邪魔にならないかを考えましょう。
そのあたりは、各設置場所の条件によりますので、基本は模式図のとおりの並べ方をするものとして話を進めます。
まずCのトロ舟の位置を決め、トロ舟の上に穴がくる位置にAとBのタライが置けるよう、重ブロックを並べて二段に重ねます。
図では、Cのトロ舟の壁面は垂直に描かれていますが、実際には少し斜めになっているため、トロ舟の上面の面積より、下面の面積の方が狭くなります。
AとBのタライがあまり深くCのトロ舟に覆い被さるのではなく、上からタライの穴を覗いたとき、Cのトロ舟の下面の縁ぎりぎりより少し内側が真下に見える位置にタライを置きましょう。
図では、Cのトロ舟の上を、AとBのタライが両脇から完全に覆ってしまっていますが、なるべくCの上の空間は開けていた方が、ポンプ槽のメンテナンスがやりやすくなります。
例えば、ポンプの吸い込み口に苔やゴミが詰まって循環する水量が落ちる場合があります。その場合、ポンプを持ち上げて苔やゴミを取る作業が生じますので、ポンプの上の空間は開けていた方が作業をやりやすいです。
作物栽培槽、魚飼育槽それぞれに共通の部品として、タライの穴にはめる異型ソケットに接続するための、口径13mmの塩ビ管を、5cm程度の長さに二本切断してください。
切断できたら、口径16mm×口径13mm異径ソケットの口径13mm側に強く差し込みます。固い床に押し当てて体重をかけるか、叩き付けると、きつくはまります。
作物栽培槽用の60リットルタライの排水口の蓋を開け、塩ビ管を差し込んだ異径ソケットの口径13mm側を、排水口の穴に押し込みます。
異径ソケットは、中央部で太さが変わっていますので、太さが変わる部分がひっかかるまで、うまい具合に穴に入るはずです。
作物栽培槽を、トロ舟の上に適正に穴が来るように、積み上げたブロック上に置いて下さい。
現在、タライの中は、穴に異型ソケットが差し込まれ、口径16mm側の差し込み口が、上向きに開いている状態です。
プラスチック製の丸型の籠を、逆さにして、異型ソケットを覆うように置きます。
籠の形は、丸でなく四角形でも良いのですが、平らな底面に軽石の重量がかかると、凹んでつぶれる場合があります。丸い面で軽石の重量を受けた方が強度的に強いため、筆者は好んで丸型の籠を使用しています。
籠の目合い、要するに編み目の大きさは、軽石が通過しない大きさであれば、何でも構いません。
籠の大きさは、異型ソケットの上にかぶせて置いた際、ソケットが籠にぶつからなければ何でも構いません。
大は小を兼ねますが、あまり籠が大きすぎると、この先、籠の上に軽石を敷いた際に、軽石の厚みが薄くなってしまいますので、小さめの籠で十分です。
筆者は、近所の100円ショップで売られている、一番小さな丸い籠を愛用しています。
直径19センチメートルとあるので、逆さにして置くと、厚さは10センチメートル程度になります。異型ソケットの高さを十分に覆えます。
もし、異型ソケットが、逆さにした籠の内側にぶつかるようであれば、異型ソケットの材質は塩ビなので、塩ビ管を切断するように、異型ソケットを若干短く切り詰めてしまって問題ありません。
丸籠の上に立てるつもりの塩ビ管を準備します。
塩ビ管を切断する長さは、逆さにした丸籠の上に塩ビ管を立てた際、塩ビ管の上端が、作物栽培槽内に今後敷き詰める軽石の上端と同じか、わずかに飛び出す程度の長さです。
製品により異なりますが、一般的な軽石の袋は、14リットル入り、16リットル入り、18リットル入りといった、規格です。
60リットルタライの上端近くまで敷き詰めようとする場合、タライ一つにつき、概ね3袋は必要です。
しかしながら、軽石の袋の規格により、実際に軽石が、タライのどこまで入るのかはわからず、塩ビ管を切断するべき適当な長さの判断がつきません。
幸い、魚飼育槽に使うつもりのタライが空なので、底の穴の蓋を閉めてから、試しに魚飼育槽用のタライに、軽石の袋の中身をあけてみましょう。
概ね、その高さが、作物栽培槽に入る軽石の高さです。
目分量で構いませんので、丸籠の上に、どの程度の長さの塩ビ管を立てれば良いか判断して、塩ビ管を切断してください。
実際に塩ビ管を立てた際に、作物栽培槽内の軽石を均した高さと塩ビ管の上端の高さが少しぐらい違っても問題ありません。
もし、塩ビ管の上端が、軽石より少し低くなってしまうようならば、軽石を少し減らすか、塩ビ管の口付近の軽石が低くなるように、軽石の表面を斜めに均せば良いですし、逆に塩ビ管の上端が軽石より高いようならば、そのままにしておけば良いだけです。
下の写真は、丸籠と塩ビ管とタライの縁の高さの関係がわかる写真です。
筆者がいつも利用しているタライは、写真のようにタライの縁より少し低い位置に、ホースを差し込んで抑えるための穴が開いています。
したがって、立てた塩ビ管の高さは、ホース用の穴より少し低くする必要があります。さもないと、作物栽培槽内の軽石が目詰まりした際、水は塩ビ管に流れ込まずに、ホース穴から措置に溢れ出してしまいます。
写真の例では、塩ビ管の長さを測定したところ、概ね21cmでした。
長さに決まりはありませんので、ホースの穴より塩ビ管の高さが低くなるように、目測で切断してしまって問題はありません。
切断された塩ビ管の高さにあわせて、タライに軽石を敷き詰めればいいだけです。
魚飼育槽の場合、水はなるべくタライの上の方まで入れたいところですが、作物栽培槽の場合、軽石は必ずしもタライの上まで入れる必要はありません。
大根のような根菜類や、芋類を栽培するのであれば、作物栽培槽の上まで軽石を入れて、根が伸びられる深さや芋が育つ場所をなるべく確保したいところですが、小松菜のような葉物野菜を栽培するだけならば、それほど軽石の深さを気にしなくても良いでしょう。袋の量なりに、タライに軽石を敷くので大丈夫です。
とりあえず一袋分の軽石から初めて、後から軽石を追加するという手もあります。
下の写真は、とりあえず一袋分の軽石をタライに敷いた様子です。
軽石を平らに均せば、ほぼ丸籠の底部分だけが見える程度に、丸籠が隠れると思います。
これであれば、籠の上に塩ビ管を立てる必要はありません。
葉物野菜や、トマトのような実物野菜を栽培できます。
とは言え、軽石は、作物が根を張る空間であると同時に、濾過バクテリアが生息する空間でもありますので、多いに越したことはありません。
1袋、2袋と、もし、後から軽石を追加する場合は、増える軽石の厚みの分、塩ビ管を伸ばす必要があるので、異径ではない、同口径同士の塩ビ管を接続するソケットを利用して、軽石を足す際に塩ビ管を継ぎ足し、管を延長してください。
丸籠の上に塩ビ管を立てる目的は、万一、軽石が目詰まりを起こして作物栽培槽に溜まりだしても、軽石を通過させずに排水口に水が流れるルートを確保して、タライの上から水が溢れ出さないようにするためです。
今回は、一番安い口径13mmの塩ビ管を切断して立てるという話をしていますが、籠の上に立てる程度の長さであれば、口径16mmの塩ビ管であれ口径50mm程度の雨樋管であれ、最初に用意した材料が恐らく余っています。
したがって、口径13mmの塩ビ管に固執するのではなく、口径16mmの塩ビ管や口径50mm程度の雨樋管を、緊急排水口として丸籠の上に立てても構いませんし、1本ではなく、複数立てても構いません。
口径はともかく、丸籠の上に立てるつもりの長さの管が容易できたら、魚飼育槽内にあけてしまった軽石を水で洗いましょう。
買ってきたばかりの軽石には、軽石が砕けてできた細かい白い砂が付着しているので、洗わずに使用すると、アクアポニックスシステム内を水が循環した際、魚飼育槽の水が、牛乳のように真っ白になってしまいます。
軽石ではなく、砂利や砂を作物栽培槽の培地に使う場合も、やはり洗わないと泥がついていますので、水が茶色になってしまいます。そのため、必ず、洗ってから使用してください。
少量ずつバケツに軽石を移して、お米をとぐ要領で『洗っては水を捨て』という方法を繰り返しても良いのですが、とても手間がかかります。
一番簡単な方法は、丸籠で軽石をすくって、すくった軽石にホースで上から水をかけて、洗い流す方法です。
筆者は、洗った水を捨ててしまうのがもったいないので、別の容器で水を受けて、後日、白い汚れが沈殿して水が透明になったら、すくって水やりや減った水の補給用に使っています。
洗った軽石は、ラーメンの水切りの要領で、よく振って水を切り、作物栽培槽の中に、敷き詰めます。
逆さにした丸籠の上には管を立てる予定なので、まずは丸籠がない部分から軽石を敷き詰めましょう。
逆さにした丸籠の底面部分、軽石が目詰まりした際の抜け道となる管を立てるつもりの場所付近だけを、籠をむき出しに低く残して、丸籠の上に崩れていかない程度の高さまで、その他の部分に軽石を敷き詰めます。
事前に用意していた目詰まり時の排水ルート確保用塩ビ管を丸籠の底の上に立て、片手で押さえながら、もう一方の手で周辺の軽石を塩ビ管の周りにかき寄せて、塩ビ管を立たせます。
塩ビ管内に、軽石がこぼれて入ってしまわないように気をつけてください。
管が倒れないようになったら、残りの軽石を洗って、作物栽培槽内に敷き詰めて完成です。
管の上から軽石が管内にこぼれ落ちないように、管周辺の軽石の高さを心持ち下げて、管の頭を軽石より若干飛び出させておきましょう。
完成した作物栽培槽が下の写真です。
石洗いについて、丸籠で小分けして洗う方法よりは、汚れを洗い落とす精度は落ちますが、実はもっと楽な方法があります。
洗わないまま、作物栽培槽に軽石を突き詰めてしまってからホースで水をかけ、やはり別の大型の容器で、水を受けるという方法です。
その様子は、下の写真のとおりです。
強めの水流を、軽石全体に満遍なく、しつこいくらいかけてください。
小分けして軽石を洗うより、内部の汚れが落ちにくいので、下から零れる水が透明になるまで水をかけないと、後でアクアポニックスシステムを稼働させた後、水の白濁に悩まされます。
容器に受けた白濁水は、数日放置しておくと、白濁が下に沈んで上澄み水は透明になります。
筆者は、透明になった部分の水を、アクアポニックスシステム内の水が減った際の、補給水として使っています。
さて、以上で作物栽培槽の製作は終わりです。
次回は、魚飼育槽を製作します。
かにかに