アクアポニックスのポンプ槽の製作-3-

市販の材料でつくる初心者向けの簡単なアクアポニックスの製作

前回は、魚飼育槽と作物栽培槽の上まで伸ばした塩ビ管を、90°エルボで下向きに曲げ、それぞれの槽の表面付近まで、塩ビ管を垂らしたところまででした。

おさらいの意味も兼ねて補足します。

90°エルボと、魚飼育槽、作物栽培槽のタライの縁までの距離は、概ね20センチメートルです。

ポンプとホース、さらに塩ビ管を接続する際の長さが、もともと人によってまちまちであるため、90°エルボと各タライの縁までの距離も、人によってまちまちになっているはずです。

見た目でわかりやすいので、まず作物栽培槽から話を進めます。

作物栽培槽上のエルボから、作物栽培槽内の軽石の表面までの距離を測って下さい。

メジャーで測定しても良いのですが、測定した長さで口径13mmの塩ビ管を切断したいだけなので、直接塩ビ管を軽石の上に立てて、エルボの口まであてがってみる方法が、簡単です。

エルボから軽石の表面まで、必要な塩ビ管の長さがわかりましたので、その長さで塩ビ管を切断します。

切断した塩ビ管を、エルボの口に強く差し込みます。

作物栽培槽の上で、エルボから軽石付近まで、ほぼ垂直に塩ビ管がぶら下がった状況になりました。

この状況なら水を流しても、軽石に当たった水はタライの中に飛び散るだけで、周辺を水浸しにしてしまう心配はありません。

塩ビ管の先端が、軽石のすぐ近くまで届いています。

さらに、一工夫加えて万全を期すならば、冒頭の材料一覧には記載してありませんが、もう一つT字継手を用意して、軽石側の塩ビ管の口に接続するという方法があります。

T字継手の厚みがあるので、もしかしたら、塩ビ管をエルボから垂直に垂らそうとすると、下側が軽石に接地し、垂直ではなく、若干斜めに垂らさないといけないかもしれません。

けれども、軽石に直接上から水が降り注ぐ形ではなく、T字継手によりさらに二方向に分割されて、軽石の表面に横向きに注がれる形になるため、軽石にぶつかった水が、ほぼ、跳ねる心配がなくなります。

また、T字継手が軽石に接地するため、空中で不安定に垂れ下がるだけであった塩ビ管が、地について安定します。

もう一点メリットをあげるならば、軽石表面で二方向に水が放出されるため、タライの中の広い範囲に水が撒かれて、作物が水を吸いやすくなります。

T字継手の先に、短く切った塩ビ管を接続してあげると、効果はさらに上がります。

垂らした塩ビ管の先に、T字継手を接続し、軽石に接地させています。
水は、軽石上で、二方向に撒かれるため、左右の作物が、さらに水を吸いやすくなります。T字継手の先に、さらに短く切断した塩ビ管を接続して水の出口間の距離を離してあげると、作物栽培槽内の、より広い範囲に水を撒けるようになります。

あら、こう言うといいことずくめです。

必要な材料として、最初から、もう一つT字継手を追加しておくべきだったかも知れません。

T字継手に限らず、90°エルボ、45°ベンド、異径ソケット、同径ソケットといった各種継手類は、いくつか余分に持っていると、現場に合わせて臨機応変に塩ビ管の配管を変更する対策がとれるため便利です。

本項では、必要最小限の材料を使って、手始めにアクアポニックスを始めてみる場合について紹介していますが、慣れてきたら、自分の置かれた条件にあうように色々と工夫をしてみてください。

その上で、うまくいった工夫、また失敗した工夫があったら、教えて下さい。

いずれ、別項で紹介して、情報を共有するとともに、筆者自身のアクアポニックスシステムも改善していきたいと思います。

さて、続いて、魚飼育槽側です。

現在、魚飼育槽に水は入っていません。

もし、魚飼育槽が満水になるまで水を入れれば、水面は排水口に立ててある塩ビ管の上端の高さになるはずです。

作物飼育槽同様、エルボから、想定される水面の高さまでの距離を測って下さい。

適当な長さに塩ビ管を切断して、下向きのエルボに接続します。

理想は、魚飼育槽の真上から垂直に垂らした塩ビ管の先端が、想定される水面より数センチ上にある状態です。

エルボから垂れた塩ビ管の先端が、槽の右に立つ、排水用の塩ビ管の先端と、ほぼ同じ高さです。タライの側面に、異型ソケットが接続されていますが、今回の製作とは無関係です。有り物のタライを利用して、見本用写真を撮影しています。

流入水用の塩ビ管の水中に先端が入ってしまうようではいけません。

理由は、水中に酸素を取り込むためです。

塩ビ管の先端から放出された水が、水面にぶつかる際、空気の泡が発生します。

空気の中には、魚が呼吸するために必要な酸素が含まれているため、水の流れで水中に発生した泡は、水面に出て消えるまでの間に、幾ばくかの酸素を飼育水に溶け込ませます。

魚は、そのような水中に溶け込んだ酸素を呼吸して生きています。

魚の飼育方法については、別項でお話しするつもりですが、水量や水面の面積に対して魚の数が少なければ曝気設備は必要ありませんが、アクアポニックスのように、水量に対して多めに魚を飼育しようという場合は、何らかの曝気により、魚が必要とする酸素を、水中に補給してあげる必要があります。

一般的な魚飼育用の曝気装置はいわゆるブクブクですが、本項で製作しているアクアポニックスシステムの場合は、この塩ビ管から放出された水が、水面にぶつかる部分が、曝気機能を果たしています。

もちろん、ブクブクを併設しても構いません。魚にとっては、ブクブクもある方が、むしろ安心です。

塩ビ管からの流入する水での曝気能力を向上させるためには、より高い位置で塩ビ管から水を放出して、なるべく落下中も水が空気に接触するようにしつつ、水面に水を叩き付けるようにすることです。

しかしながら、それでは、周囲が飛沫で水浸しになってしまいますので、本項では塩ビ管の先端と水面の距離を、数センチメートルとしています。

また、水の落下距離が長いと、その分、落下した水が水面にぶつかる際の水音が、うるさくなります。

繰り返しますが、だからといって、塩ビ管の先端を水中に入れてしまってはいけません。

大切な曝気能力が失われて、最悪の場合、魚が酸素不足で死んでしまいます。

もし、切断した塩ビ管が長すぎて、先端が水面に接触してしまうようであれば、エルボから塩ビ管を垂直に垂らすのではなく、垂直方向に対してエルボを若干ひねって、塩ビ管が垂れる向きを斜めにしてあげると、塩ビ管の先端を水面から離せます。

塩ビ管を垂直ではなく斜めに垂らして、塩ビ管の先端と水面の距離を調整します。

ポンプ槽と魚飼育槽の距離に余裕があれば、T字継手から90°エルボで垂直に塩ビ管を垂らすのではなく、45°ベンドで塩ビ管をT字継手から魚飼育槽に斜めに配管して、魚飼育槽内に水を流す方法も有効です。

90°エルボの代わりに、45°ベンドを使用しています。

いずれにしても、これでポンプ槽の製作は終わりです。

さて、作物栽培槽、魚飼育槽、ポンプ槽というアクアポニックスに必要な三槽が完成いたしました。

完成したアクアポニックスシステムのイメージ。見本用の撮影のため、写真では丸い籠の中のホースの先に、肝心のポンプがありません。

次回は、実際に作成したアクアポニックスの稼働と、日々のメンテナンスについて、お話しします。

かにかに