アクアポニックスの日常管理-1-

市販の材料でつくる初心者向けの簡単なアクアポニックスの製作

今回から、アクアポニックスの日常的な管理についてお話しします。

前回までで最も簡単なアクアポニックスシステムが製作できました。

塩ビ管を適当な長さに切断する行為以外は、市販されている材料を購入して組み合わせるだけですので、それほど難しい作業ではなかったと思います。

塩ビ管を切断するためのノコギリも、専門的なノコギリではなく、100円ショップの工具コーナーで売られている物で良いので、ぜひ、一本持っていてください。

100円ショップの安価なノコギリ

実際に基本的なアクアポニックスシステムを稼働させていると、「もう少し、ここの塩ビ管は短い方が良かったな」とか「ここで分岐させて、もう一つ槽を増やそう」といった具合に、改善したい気持ちや、アレンジしたい気持ちが必ず出てきます。

そういった時にノコギリさえ手元にあれば、塩ビ管を適当な長さに切断してつなぐだけの作業なので、簡単に対応ができます。

逆に塩ビ管をもう少し長くしたい場合は、入口と出口が同口径の塩ビソケットを使って、二本の塩ビ管を接続してあげれば良いだけです。

左右の塩ビ管をソケットで接続

簡単なアクアポニックスシステムの製作で行っている作業の基本は、塩ビ管の切断と、継手による曲げや分岐、延長です。

塩ビ管と継手は接着をせず、きつくはめてあるだけですので、手を加えて、もし、不具合が発生した場合でも、簡単に元に戻せます。

もちろん、接続部からの水漏れが心配な方は、接着してしまっても構いません。

さらに、穴開け加工が加わると、システムのアレンジの幅が広がるのですが、まずは、基本のアクアポニックスシステムを稼働させて、いずれ、アレンジを加えたい気持ちが出てきた場合には、次章以降も読んでみていただくと、基本のアクアポニックスシステムの応用的な工作方法について、より深く知っていただけると思います。

それでは、基本の簡単なアクアポニックスシステムの稼働についてです。

まず、魚飼育槽に水を入れて、満水にさせます。

手近な蛇口から、ホースを伸ばして水を入れられると便利です。

まだ、ポンプを電源に接続して、通電させてはいけません。

筆者が利用しているポンプには、オンオフのスイッチがないので、コンセントに接続すると、ポンプが動き出してしまいます。

ポンプの空運転は、ポンプの寿命を縮めますので気をつけて下さい。

魚飼育槽が満水になると、サヤ管の中を下から上がってきた水が内側に立つ塩ビ管の縁を超え、塩ビ管内に流れ込んで、下のポンプ槽へと落ちるはずです。

サヤ管内で、塩ビ管を越流する水

うまく流れ込んでいるか、水が跳ねて飛沫が槽の外に飛び散っていないか、確認して下さい。

ポンプ槽に流れ込む水

槽の外に水が飛び出してしまうようだと、次第にアクアポニックスシステム内の水が、減ってしまいます。

必要に応じて、魚飼育槽内の水の出口である塩ビ管の長さを変えるか、先端にエルボやベンドといった向きを曲げる継手を接続して、飛沫が槽の外に出ないように調整して下さい。水飛沫の話は、作物栽培槽にも当てはまります。

ポンプ槽内の水位が、丸籠の縁を超えそうな高さになったら、蛇口を閉めます。

丸籠の縁より低い水位

その後、ポンプをコンセントに接続して稼働させて下さい。

ポンプ槽内の水をポンプが吸い上げ、T字継手で二方向に分岐され、魚飼育槽と作物栽培槽、それぞれに水が吐き出されるはずです。

作物栽培槽内に若干の水が溜まるため、ポンプ槽の水が、その分、減ります。

そのため、ポンプ槽に水を追加し、ポンプ槽の水位が、丸籠の縁付近になるまで戻して下さい。

この先、アクアポニックスシステムを稼働させていると、配管部の水漏れに限らず、植物による蒸散や魚の動きで生じる波や水飛沫、もっと単純に水の蒸発といった理由で、ポンプ槽の水位は毎日下がります。

里芋の葉の先端に注目
水が雫となり外に落ちた分、全体の水は減ります

水が減る量は季節や天候によって変わりますが、一日辺りのおおよその減る量を覚えておいて、水が減りすぎてポンプが空回りをしてしまう前に、こまめに水を補充するようにして下さい。

この『水漏れの確認と水の追加』が、日常行うべき第一の管理です。

アクアポニックスシステムのどこからも水が漏れていないようならば、そのまま稼働を続けて、不具合が生じないか、丸一日以上、様子をみて下さい。

まだ、魚飼育槽に魚は入れません。

いずれ魚の飼い方についての項でお話しするつもりですが、通常、水道水には殺菌のための塩素が含まれています。

塩素は魚にとって有毒ですが、塩素が含まれた水を放置しておくだけで、塩素は自然と空気中に抜けていきます。

そのため、丸一日以上、アクアポニックスシステムを試運転して様子を見ている間には、魚を飼育しても問題のない水になります。

どうしても、すぐに魚を飼育したい場合には、塩素を無害化する薬品を使う方法もありますが、まだ作物栽培槽の軽石の中に十分な数の濾過バクテリアが生息しているわけではありませんので、慌てて、魚を飼育しない方が賢明です。

『濾過バクテリアって何?』と思われた方は、別項の『第一章 アクアポニックスとは』をお読み下さい。

個人的には、アクアポニックスシステムの製作を、例えば日曜日に行ったとしたならば、次の日曜日まで、丸一週間は、魚を飼わない状態で、水だけをシステム内に循環させておく方法を推奨します。

少なくとも、丸一日は試運転を続けて下さい。

魚飼育槽に魚を放してからシステムに不具合を見つけても、システムの手直しをしている間、魚をどこに避難させておこうかと悩む必要があるなど、対応が難しくなります。

試運転期間が終わり、特にシステムに不具合がなかったならば、魚飼育槽に魚を放します。

試運転期間中も、毎日ポンプ槽の水位を確認して、水が減っているようならば補充して下さい。

万一どこかから水漏れがあるようならば、配管をきつくはめ込む等、状況に応じて対策をとって下さい。

次回へ続きます。

かにかに