今回から、ポンプ槽の製作です。
模式図と必要な材料は以下のとおりです。例によって、以前の記事(市販の材料でつくる初心者向けの簡単なアクアポニックスの製作に必要な材料とは)から転載します。
C.ポンプ槽
①80リットルトロ舟×1個 (22リットルコンテナボックスでも可)
②水中ポンプ×1基
③水中ポンプ用ホース
④塩ビ管 直管 口径13mm
⑤塩ビ管 T字継手 口径13mm×1個
⑥塩ビ管 90°エルボ 口径13mm×2個
⑦丸籠×1個
さて、前回までの製作の結果、現在は80リットルトロ舟の両脇にブロックが積まれて、左右から60リットルタライが、80リットルトロ舟の上に張り出した状況です。
それぞれのタライの排水口から水が流れ出た場合、80リットルトロ舟 (22リットルコンテナボックスでも可)の中に、うまく流れ込む位置関係になっています。
水中ポンプに、水中ポンプ用ホースを接続して下さい。
一口に水中ポンプと言っても、様々なメーカーから様々な能力の商品が販売されています。
水中ポンプのイメージを一言で言いますと、風呂の水を洗濯機で再利用する際に使用する、風呂水ポンプです。
湯船の水の中にポンプを投げ込み、ポンプに接続したホースの先を洗濯機まで伸ばして、洗濯槽に風呂水を届けるのが風呂水ポンプの役割です。
湯船をポンプ槽、洗濯機を作物栽培槽や魚飼育槽に置き換えれば、風呂水ポンプと観賞魚飼育用の水中ポンプの役割は、まったく同じです。
だからといって、風呂水ポンプをアクアポニックスに使用して良いかと聞かれると、答えは、使用してはいけません。
風呂水ポンプは、一日の内でも洗濯機が水を必要とするごく一時的な時間に動かせば良いものですが、アクアポニックスで使用する水中ポンプの場合は、基本的に一日中ポンプが動き続けなければなれません。
実験はしていませんが、長時間の連続使用向きではない風呂水ポンプをアクアポニックスで使用した場合、恐らくすぐに壊れてしまうと思われます。
小型の水中ポンプであれば、風呂水ポンプとそれほど値段も変わりませんので、観賞魚飼育専用の水中ポンプを使用して下さい。
さて、本項で製作しようとしているアクアポニックスシステムで、水中ポンプに求める能力は、80リットルトロ舟に溜まった水を、ブロックの上に詰まれた60リットルタライの縁より上まで持ち上げる力です。
単純計算で、ブロックの厚みが12センチ×二段、60リットルタライの高さが33センチですので、最低57センチは水中ポンプに水を持ち上げてもらう必要があります。
この水を持ち上げられる高さを意味するポンプの能力値を、揚程と言います。
ポンプを選ぶ際、『揚程○○センチメートル』とか、『揚程○○メートル』といった表現が、カタログや説明書に書かれていますので、その数字を参考にして下さい。
先程の例だと、揚程57センチ以上の能力を持つ水中ポンプが必要という話になりますが、カタログに記載されている能力値は、好条件下で期待される能力値となりますので、例えば、ポンプの吸込み口にゴミが詰まった場合などの悪条件下では、ポンプの能力は、がたんと落ちます。
したがって、必要な揚程ぎりぎりの能力のポンプを選ぶのではなく、能力に余力のあるポンプを選びます。
今回は揚程が57センチメートル必要ですので、理想を言えば倍の揚程能力の1.2m、せめて1mの能力はあるポンプが欲しいところです。
本サイトは汎用的な一般論のつもりで執筆を行っているため、あまり固有名詞を使いたくはないのですが、参考までに筆者が現在使用している水中ポンプは、エーハイム社のコンパクトオン1000という名前のポンプです。
説明書には、50Hzの場合の最大揚程1.4m、60Hzの場合の最大揚程1.75mと記載されています。
同じシリーズに、コンパクトオン600というポンプがあり、そちらは50Hzの場合の最大揚程1m、60Hzの場合の最大揚程1.2mとありますので、もしかしたらそちらのポンプでも良いのかも知れません。
とはいえ、将来的に例えばタライの下に置くブロックを三段にしたり、タライをもっと容量の大きな高さのある物に変えたり、水をもっと遠くまで送りたくなったりと、様々な理由から揚程が不足する可能性がありますので、先程のポンプを筆者は使用しています。
ところで、ポンプの揚程の能力の高さと、ポンプの値段は比例します。
能力が高いポンプほど、値段も高くなりますので、お財布とご相談下さい。
ポンプを選ぶ際、もう一点気にしていただきたいポイントがあります。
ホースに接続できるホースの口径です。
筆者が本サイトで紹介しているアクアポニックスシステムでは塩ビ管、特に口径13mmと口径20mmの塩ビ管を、製作に多用します。
そのため、水中ポンプに接続できるホースの内径と口径13mmの塩ビ管の外径が同じだと、水中ポンプ→ホース→塩ビ管と、それぞれを直接、またはホースと塩ビ管を接続する継手を使ってつなぐことができますので、とても便利です。
先程のコンパクトオン1000という水中ポンプの場合、接続できるホースは、口径16/22mm、口径19/27mmの二種類です。
スラッシュ(/)の前の数字はホースの内径、スラッシュの後の数字は、ホースの外径です。
口径16/22mmと書かれた場合、ホースの内径が16mmで外径が22mmのホースになります。
口径13mmの塩ビ管の外径は、18mmです。
口径を比較すると、塩ビ管の外径はホースの内径を超えています。
もし、塩ビ管同士の接続である場合は、口径が異なるため、異型ソケットがなければ接続できません。
塩ビ製なので、材質が固く、広がらないためです。
ところが、ホースの材質は、通常、ゴム的な素材でできています。
裏技ですが、力尽くで塩ビ管をホースに押し込むと、若干、ホースの口径が広がり、塩ビ管とホースがきつく密着して、水漏れせずに接続できます。
もちろん、メーカー推奨の使用方法ではないため、この製作は自己責任で行ってください。
また、ホースの素材によっては、うまく広がらず、接続できない場合もありえます。
筆者の場合、過去に購入した様々なメーカーのホースやポンプなどの部品が、在庫として手元にありますので、それらを適当に組み合わせて、実験的に接続していますが、初めて製作をする場合、そのようにはいきません。
ですので、冒頭の必要な材料欄に記載はありませんが、素直に塩ビ管とホースを接続するための専用の継手を使用されると良いと思います。
以下の写真は、筆者流の力尽くでホースと塩ビ管を接続した場合の例となっています。現実には、ホースと塩ビ管の接続部に、専用の継手があるものだと解釈してください。
今回の製作の場合、ホースの長さは、30センチ程度あれば十分です。
口径13mmの塩ビ管の長さは、50センチ程度あれば良いでしょう。
ホースと塩ビ管を接続すると、ポンプそのものや継手の大きさも含めて大体80センチ程度になりますので、少なくとも、必要とする最低57センチの高さに水を持ち上げるだけの長さは、確保できます。
カタログ上のポンプ能力までは、まだ余裕がありますが、だからといって塩ビ管やホースを長くして、ポンプの能力ぎりぎりの線を目指してはいけません。
アクアポニックスシステム全体に対して、ポンプは常に余裕を持つように心がけましょう。
次回に続きます。
かにかに