4.メダカポニックスでのメダカの飼い方(後編)

メダカポニックスのすすめ

前回は、稚魚が親魚と同じくらい大きく育ったら、親魚容器に移動しましょう、というところまで、お話ししました。

今回は、若干の補足です。

人によって成長の度合いに差があるように、同じタイミングで孵化した稚魚であっても、やはり、成長には差が生じます。

『とび』と言って、他よりも成長が早い稚魚は、自分より小さな稚魚を食べたり、餌を独占してしまい、さらに早く成長していきます。

稚魚の中に、そのような『とび』が含まれていると、『とび』でない稚魚にとっては脅威となりますので、『とび』は網ですくって、別の容器に隔離してください。

ある『とび』を隔離すると、また別の稚魚が、次の『とび』化をしますので、その場合は、やはり隔離します。

筆者はあまりできていませんが、時間に余裕があれば、こまめに稚魚飼育容器を覗いて、『とび』がいれば、どんどん隔離をしていきましょう。

その都度新しい容器を用意していては容器の数が際限なく増えてしまいます。先に生まれた他の稚魚飼育容器で泳いでいる稚魚が、後から生まれた稚魚飼育容器の『とび』と同じぐらいに成長しているのであれば、後から生まれた稚魚飼育容器の『とび』を、先に生まれた他の稚魚飼育容器に放すのでも構いません。

要するに、ある容器に入っている稚魚の大きさは、大体、同じ大きさぐらいになるように、気を使いましょうという話です。

他より極端に大きな稚魚がいたら別の容器に隔離しましょう。競争に負けて餌を食べられなくなった他の稚魚の成長が遅れてしまいます。

『とび』を集めた容器であれ、通常の稚魚飼育容器であれ、二か月もすれば、稚魚は成魚になります。

親魚に食べられない程度の大きさまで成長した稚魚がいたならば、網ですくって、アクアポニックスシステム中の、親魚飼育槽に放しましょう。

はい。最初、30尾でスタートしたメダカが、これで31尾になりました。

机上の計算になりますが、メダカの成魚が30尾いた場合、雌雄二分の一の割合だとすると、雌は15尾です。

15尾の雌親が、控えめに見積もって毎日10粒の産卵をすると、一日当たり150粒の卵が、魚巣に産み付けられます。

150粒の内、受精が成功していたり、カビに侵されたりしないで、約半数が無事に孵化までこぎつけたと仮定すると、稚魚は75尾です。

同様に、約半数の稚魚が無事に成魚まで成長したとすると、37.5尾、数をわかりやすくするため、親魚と同じ30尾としましょう。

十分な容器の数が揃っている場合、スタートから二か月後には、毎日30尾ずつ、メダカの成魚が増えていく計算です。

週に一回ずつ、卵がついた人工魚巣を取り出し、別の容器に隔離してという行為を繰り返すためには、ふ化までに二週間、成魚になるまでに二ケ月=八週間かかりますので、必要な稚魚飼育用容器は、10個です。

容器はどんどん増えていきます。

実際は、プロではないので、そのような膨大な数の容器を揃えたり管理したりはできませんが、親魚槽から卵を取り出して別の容器で稚魚を育てるという一手間を行うと、メダカは簡単に増殖できます。

最初は寂しかった親魚槽が、あっという間に過密空間になりますので、その場合は、親魚槽の増設を検討してください。

スタート当初、作物の肥料不足を心配していた状況は、どこにもなくなり、逆に肥料を消費する作物量の不足から、作物槽の増設も考える必要が生じます。

後は、イタチごっこです。

キリがないので、増えていくメダカを販売するか里子に出すあてがなければ、ある程度のメダカの親魚を確保できた段階で、すべての卵を孵化させて、すべて育て上げようとする行為は諦めて、管理が手に負える範囲内に規模を抑えましょう。

例えば、稚魚飼育槽を一つだけにするとか、魚巣の交換を二週間に一回とする、わざわざ『とび』を抜くことはせずに同じ環境内での成長競争に任せきる、といった具合です。

くれぐれも、増えすぎたメダカを外界に放流する行為はやめてください。

ところで、メダカを飼育する際、メダカを死なせてしまわないための注意点がいくつかあります。

ポンプの配管が外れて、水が空になってしまったという失敗は論外であるとして、魚を飼育していて、一番よくある死亡原因は、飛び出しです。

メダカは、意外に飛び跳ねる魚ですので、ジャンプした拍子に容器から飛び出して、気づかない内に、干からびて死んでいる場合があります。

飛び出しによる死亡を防ぐためにも、親魚飼育槽には、金網や防風ネットなどで、蓋をしましょう。

飛び出し防止のため、蓋をするか水深を低くして、メダカが飛び出さないようにしてください。

蓋には、鳥や獣、虫等による、捕食を防ぐ効果もあります。

トンボがいつの間にか水中に卵を産んでいて、メダカ水槽内にトンボの幼虫であるヤゴが泳いでいる場合があります。

ヤゴは、肉食の虫であるため、メダカを食べてしまいます。

容器に蓋がしてあれば、トンボの産卵は防げます

夏場、一番、注意をしなければいけない点は、水温です。

アクアポニックスシステム本体は、水量が多く水の循環もあるので、あまり心配はいりませんが、稚魚が入っている容器は、水量も限られ水の循環もありません。炎天下に稚魚容器を置いておくと、水がお湯になり、稚魚が全滅してしまう恐れがあります。

気温が高くなる季節は、稚魚容器は日陰に置くか、寒冷紗などで日除けをしてください。

さて、以上で、メダカ飼育で行うアクアポニックス、通称メダカポニックスの説明は終わりです。

金魚や錦鯉と比べると魚が小さいので、注意をしなければならない点がいくつか増えますが、基本的な取組方法は同じです。

逆に、メダカポニックスがうまくできる方であれば、その他の魚で行うアクアポニックスは、問題なく、行えるでしょう。

もちろん、水だけ槽や広いポンプ槽といった、メダカポニックス用のアクアポニックスシステムで、その他の魚のアクアポニックスは行えます。

話は変わりますが、世界的に、色々と不安な情勢が続いています。

野菜を含む、様々な物の値段も上がってきました。

『天災時への備えとして、アクアポニックスに取り組みませんか』という趣旨で活動を始めた本ブログですが、人災に対する備えとしても、ご家庭で手軽に野菜が収穫できる状態の確保は、もちろん有効です。

自給自足とまではいきませんが、もし、あなたが既に多くのメダカを飼育されているのであれば、ぜひ、メダカポニックスにも取り組んでみてください。

 かにかに