2021年12月現在の集計では、全国に6000箇所を超えるこども食堂があるそうです。
けれども、こども食堂の運営に携わっている知り合いに話を聞いたところ、「本当に届けたい相手には、なかなか手が届かない」という、歯がゆさを口にされていました。
こども食堂の一般的なイメージは、何らかの理由により貧困状態にあるこども(とその保護者)に対して無料(または安価)で食事を提供するボランティア活動、というようなものかと思います。
大抵のこども食堂では、対象者を貧困家庭に限定しているわけではなく、誰でも利用できるようになっています。もちろん、利用者が貧困である証明は不要です。
対象者を貧困家庭限定にしてしまうと、こども食堂を利用していることを誰か知り合いに見られた際に、貧困であると知り合いにばれてしまうという弊害があるためです。
そうなると、恥ずかしいから利用したくても利用しない、となってしまいます。
だから、大抵のこども食堂では、門戸を誰に対しても広く開けておき、利用者の中に本当に貧困状態にある方がいるかいないかの特定をせずに、さりげなく食事の手助けができるよう工夫をしています。
例えば、食事目的の空間ではなく、ご近所の寄り合い場所でもあるといった具合です。
にもかかわらず、先ほどの筆者の知人の言葉にあるとおり、本当に援助の手を差し伸べたい相手には、なかなか手が届かない、という現実があるようです。
理由はいくつか考えられますが、やはり、「知り合いにばれたら恥ずかしい」という思いは、こども食堂を利用しない理由の中でも、大きい部類に入ると思われます。
こども食堂の利用者には、もちろん貧困家庭以外の方もいて、そういった方々は、別に恥ずかしいという気持ちなく、こども食堂を利用できているのに、実際の貧困家庭の方は、利用を恥ずかしいと考えてしまいがちです。
同じ理由から、貧困家庭のこどもの親が、自分のこどもに対して、こども食堂に行ってはいけないと、利用を許可しない場合もあるようです。大人は、食事を我慢できても、こどもには酷な話です。
逆に、こども食堂という存在そのものを、当のこどもさんが知らない場合もあります。
空腹な思いをしているこどもが、こども食堂へ行けば、ご飯を食べられるのに、こども食堂という仕組みを知らなかったり、自宅の近所のどこにあるか場所を知らないために、利用ができないという場合です。
大人は、情報的に、こども食堂の存在に辿り着けるのに、恥ずかしいから利用しない。
こどもは、情報的に、こども食堂の存在に辿り着けないから、利用できない。
そういった現実もあると思います。
もちろん、こどもさんの中にも、恥ずかしいから、こども食堂を利用しないといった方もおられるでしょう。
そこで、筆者が、手前みそながら、こども食堂関係者の方へお勧めしたいのが、アクアポニックス、中でもメダカポニックスです。
筆者は自宅敷地の道路に面した場所に、アクアポニックスのガラス水槽を並べて、様々な種類の魚を飼育しています。その様子は、さながら、ちょっとしたミニ水族館です。
近所に保育園があるのですが、筆者宅のアクアポニックス水族館は、保育園のお散歩コースになっていて、毎朝、沢山の園児さんたちが引率の先生に連れられて、道路沿いの水槽を眺めています。
筆者の家の斜め前には小児科のお医者さんもあるのですが、コロナ渦の昨今は、待合室だけではなく、風通しが良いよう、建物の外のテントの下に並べられた椅子に座って、患者さんたちは順番を待っておられます。
順番待ちの方たちが、よく筆者宅のアクアポニックス水槽を眺めています。
筆者が魚に餌を与えていると通りすがりの方によく話しかけられるのですが、お孫さんをお医者さんに連れてきたというおじいさんから、順番待ちに退屈した孫が、保育園でいつも見ているお魚を見たい、というので見せてほしいと言われ、快諾した経験があります。
こどもが魚を見たがったので、(魚を沢山飼っている)こども食堂を訪れる。
または、こどもさん自身が、魚を見るために、(魚がいる)こども食堂を訪れる。
そのついでに、ご飯も食べて帰る。
そういう仕組みは、いかがでしょうか?
潜在的に、こども食堂を利用したい気持ちはあるけれども、恥ずかしさから踏み切れないという方に対して、アリバイというか、こども食堂を訪ねる別の理由を与えてあげられると、もっと足を運びやすくなるのではないかと思っています。
本当はご飯を食べに来たとしても、こどもがお魚を見たがったという大義名分があれば、恥ずかしがらずに足を運んでもらえるのではないかと考えた次第です。
もちろん、その言葉が方便であることはお互いにわかっているのですが、人は自分に言い訳をできれば、行動できます。
筆者は魚飼いなので魚を例にしましたが、綺麗な花が沢山咲いているとか、珍しい動物や鳥がいる、漫画を読めるとかゲーム機械で遊べるといった、こども食堂という本来の目的以外に、何かこどもが興味をそそられるような、気を引く別の物を用意する方法はありだと思います。
こども食堂でありながら、近所の寄り合い所でもあるのと同じ考えです。
けれども、ただ、寄り合い所という名前にするだけでは入りづらいので、積極的に寄って行きたくなる何かを、別に用意しようという考えです。
余談ですが、先ほどのおじいさんとお孫さんの話ですが、本当は、お孫さんよりも、おじいさんのほうが魚に興味があって、むしろ、孫をダシにして、自分が魚を見に来たという気がしました。
そのようなわけで、食事という本命以外に、何か相手の興味を引くものを用意しておく方法は、有効だと思います。
今の話は、保護者がこどもと一緒に、こども食堂を訪ねやすくなるための案ですが、例えば、こども食堂そのものを知らないお子さんであっても、近所に外から見える場所に沢山の魚を飼っている家があって、通りすがりに興味を惹かれて見ていたら、そこは、こども食堂という場所で、ご飯が食べられた。よし、また今度も来てみよう、という具合に、こどもさん自身がこども食堂を見つけられる、きっかけになるかも知れません。
例えば、こどもさん同士で普通に、あそこ、水族館みたいだから、お魚見に行こうよ、という感じで、こども食堂に寄ってくれるようになったら、いいと思いませんか。
とはいえ、金魚や錦鯉の飼育は、難しいとは言いませんが、通りすがりに目を引くほどの数を飼育しようと考えると、施設と手間が大変です。
その点、メダカであれば、心配はないでしょう。
飼育の難易度は、金魚や錦鯉と比べて遥かに下がります。
通りすがりに目を引くような数になるのも、あっという間です。
そう言う理由から、筆者は、単なるアクアポニックスではなく、メダカポニックスを、こども食堂にお勧めしています。
また、メダカをお勧めする理由は、飼育が簡単というだけではありません。
こども食堂の多くがボランティアや寄付によって成り立っているため、どこのこども食堂でも、運営費(活動費)の確保が懸案となっています。
メダカであれば、庭先の道路沿いに無人直売所方式で商品を並べて、お手頃な値段設定にしておくだけで、購入者が現れ、いくらかの運営費の足しになる可能性があります。
毎日でなくても、特定の曜日とか、地元のお祭りの日、こども食堂のイベントに合わせてといった販売形式でも良いでしょう。
『メダカの売り上げを、こども食堂の運営費に充てています』旨の一文を出しておけば、単なる募金には腰が重い方でも、それならばと寄付金のつもりで購入していただける場合もあります。
もちろん、無断で持って行ってしまうような心無い行いをする人もいますが、一般的なメダカは意識して増やそうと考えると、そもそも飼いきれなくなるほど、どんどん増えていく魚ですので、袋などの資材費がかかったとしても、マイナス収支には、そうそうなりません。
もちろん、ぼろ儲けできるものではありませんが、こども食堂の運営に対する理解を得るための宣伝活動兼こどもへのPRと考えれば、本当にマイナス収支になってしまわない限りは、許容の範囲内ではないかと思います。多分、電気代くらいは賄えます。
近所に、金魚を飼っている方はいても、錦鯉を飼っている方は、ほぼ見かけません。
けれども、メダカを飼っているという方は、近年、ざらに見かけます。
筆者は、魚の飼育という、そもそもマニアックな行為を長年趣味にしてきましたが、街を歩いていて、庭先に魚(メダカ)が飼われている容器が置かれている様子を、こう普通に見かけるようになったのは初めてです。
メダカならば飼ってもいいけれども、金魚や錦鯉は大変そうだから飼う気はない、という方もおられますので、観賞魚飼育の一ジャンルとしてメダカ飼育があるのではなく、ペット飼育の一ジャンルに、観賞魚飼育と並列する別のカテゴリーとしてのメダカ飼育があるかのようです。
話がずれました。
筆者がこども食堂関係者の方へ、メダカポニックスをお勧めする理由は、まだあります。
メダカポニックスは、アクアポニックスの一種であるため、何より新鮮な野菜が、直接、手に入ります。
現在、こども食堂に限らず、フードロス対策やSDGsの一環として、フードドライブやフードシェアリングといった取組みが全国的に広まっています。
ですが、そういった取組みでは、大抵の場合、生鮮食品は対象とされていません。
生鮮食品は、保管状況により痛んでしまう危険があるため、残念ながら仕方ない話です。
そこで、筆者が、こども食堂でアクアポニックスに取り組むことをお勧めするのは、寄付がなくても、野菜を自給自足で賄える可能性があるためです。
ご家庭で消費するあらゆる種類の野菜をアクアポニックスで自給自足しようと考えると困難ですが、毎週一束か二束のネギと小松菜を購入する相当であれば、ほぼ自給できます。
多くのこども食堂では、毎日、食事を提供しているわけではなく、週に一回とか、月に何回といった具合に、日を決めて、食事の提供を行っています。
カレーに入れるじゃがいもと人参と玉ねぎについては無理でも、みそ汁に入れるネギと小松菜については、自給自足する。その程度であれば、十分、可能です。
毎回の食事提供日ではなく、そのうちの月に一回分の食事提供日に合わせて、瞬間的にネギと小松菜を収穫して、次回の収穫ができるまでは、栽培にいそしむ。
それならば、まったく問題ありません。
本サイトの別の項を見ていただければお判りいただける通り、ネギは市販のネギの根元を植えておけば簡単に根付いて成長を開始します。収穫時には、根元で切断して、根の部分は、そのまま植えた状態しておけば、また伸び始めます。
小松菜も簡単です。
料理の際に、切断した小松菜の根元を植えておけば、成長して伸び始めます。
もちろん、伸びた、その小松菜を収穫して食べてもいいのですが、葉物野菜は、長期間栽培し続けると、薹が立って、すぐに花を咲かせたがったり、食べても苦くなりますので、そのまま、花を咲かせて種を作り、乾燥した頃に種を取って蒔けば、何倍にも増やせます。
植物栽培槽内に大量に種を蒔いて、適宜、芽を間引きつつ育ててみてください。
大きく育ったら、すべてを収穫せず、一部の株を残して花を咲かせ、次の種を取れば、累代で栽培できます。
植物栽培槽に、防虫ネットをかけて虫が入らないようにしてしまえば、防除などの面倒な管理も一切いりません。
生鮮野菜として、ネギと小松菜が自給自足できるだけでも、運営する側としては、随分、楽になるのではないでしょうか。
夏場であれば、空心菜も、倍々に増やしていける便利な野菜です。
さて、以上が、こども食堂にアクアボニックス(メダカポニックス)をお勧めする理由となります。
要点を整理しますと、
一点目、潜在的な利用希望者に、こども食堂に立ち寄るきっかけを提供できる。
二点目、メダカを販売することで、こども食堂の運営費の一部を補填できる。
三点目、こども食堂で使用する野菜の一部を自給自足できる。
の三点となります。
こども食堂関係者の方々に、何らかのご参考になれば幸いです。
何か、ご質問等ございましたら、遠慮なく、メールフォームからお問い合わせください。
それでは。
かにかに