12.横連結式グローベッドの製作

実践的なアクアポニックスの製作

 下の図は、横連結式グローベッドの、一番シンプルな基本形です。

横連結式グローベッドの、一番シンプルな基本形

①魚の飼育容器より高い位置に、複数のグローベッドを置き、グローベッド同士をパイプで接続します。

②魚の飼育容器の水をポンプで吸い、それぞれのグローベッドの上から、散水します。

③グローベッドに散水された水は、軽石内を通過した後、接続されたパイプで集められ、魚の飼育容器に戻ります。

というのが、一番シンプルな基本形の仕組みです。

一番シンプルな基本形の欠点は、図では省略していますが、それぞれのグローベッドを魚飼育容器より高くするために、台が必要となる点です。

グローベッドの数が多くなればなるほど、構造が大がかりになってしまいます。

また、別の問題点として、万が一、グローベッドのどこかで水が溢れたりパイプが外れた場合、魚飼育容器内にポンプがあるため、水が減り続けてしまうという欠点があります。

仮にどこかで水漏れが発生し、魚飼育槽にグローベッドから水が戻ってこなくなっていたとしても、機械的にポンプは水を吸い上げ続けてしまうため、魚飼育槽内の水は、いずれ空になり、魚が死んでしまいます。

それらの欠点を改善して、現在、筆者が使用している横連結式グローベッドの構造が、下記の仕組みです。

魚飼育槽から直接ポンプで水を吸うのではなく、魚飼育槽にポンプで水を送り込み、魚飼育槽から溢れた水がグローベッドに流れていくようにしています。

仮にどこかで配管が外れて水が漏れる様な事態が生じても、魚飼育槽内にポンプはないので、満水状態から水は減りません。

水漏れで周辺が水浸しになる被害はあっても、魚が干上がって死ぬ事態だけは避けられます。

横連結式グローベッドシステムの製作に必要となる資器材一式のリストは、以下のとおりです。

①120リットルタライ

②13リットルボックスコンテナ

③A4ファイル籠 または キッチン水切り籠

④不織布

⑤軽石

⑥水中ポンプ及びホース

⑦塩ビ管及び継手類

⑧防鳥ネット または 金網

上部式グローベッドを製作する際の材料と、ほぼ変わりません。

13リットルコンテナボックスに穴を開け、直径20mmのバルブソケットを接続します。
穴の位置は、魚の飼育容器をどこに置き、グローベッドをどの方向に設置していくかを考えながら決定します。

まず、13リットルコンテナボックスに穴を開け、バルブソケットを接続します。

なお、穴開けなどの具体的な工作方法については、「アクアポニックスの基本の工作」をご覧下さい。

筆者は、バルブソケットの口径を20ミリメートルにしています。

口径が20ミリメートルであれば、水中ポンプで、口径13ミリメートルの塩ビ管から水を流入させても、自然流下で排水させうる気がするからです。

実際は、使用するポンプの能力で水の流量は変わってしまうため、穴の大きさや個数は、適宜、調整してみてください。

次いで、コンテナボックスとコンテナボックスを、塩ビ管とホースで接続します。

口径20ミリメートルの塩ビ管の外径は28ミリメートルです。

内径28ミリメートルのホースで、短く切った口径20ミリメートルの塩ビ管と塩ビ管を接続したパーツを製作して、コンテナボックスのバルブソケットに接続します。

バルブソケット同士を、直接、塩ビ管で接続しても良いのですが、間に柔らかいゴムホースを挟むことで、揺れや衝撃を緩和させようと意図があります。

面倒くさいと思われる方は、直接、バルブソケットを塩ビ管で接続して下さい。

13リットルコンテナボックス同士を接続するため、短く切った塩ビ管二本を、塩ビ管の外径と同じ内径のホースに差した接続パーツをつくります。
上の写真のパーツを使って、容器同士を接続した様子です。
単純に塩ビ管でバルブソケット同士を接続しても良いのですが、地震時などに、たわみがないと配管が壊れる恐れがあるため、筆者は途中にホースを挟んだ構造にしています。

コンテナボックスを、どのような向きに設置するべきかは、各家庭の条件によります。

将来的に、さらにグローベッドを追加する際のことも考えて設置場所を決めて下さい。

コンテナボックスとコンテナボックスの間の塩ビ管を、直線ではなく、適宜、継手で曲げながら設置すれば、ある程度、配管は自由にできます。

複数の容器同士を接続した様子です。
水に流れがあることが見てとれます。
塩ビ管用の継ぎ手で、配管の向きを自在に変えます。
複数方向からの容器を、T字の継ぎ手で接続しています。
設置の向きや数は、設置場所にあわせて工夫してください。

塩ビ管を接続した水路役となるコンテナボックスの上に、作物栽培槽(グローベッド)となるコンテナボックスを載せます。

水を集めるための下段槽に、グローベッドとなる上段槽を載せます。
二段にせず、グローベッド同士を一段で横に接続する方法もありますが、筆者は、次の理由から多段式にしています。

グローベッド同士を一段で接続した場合の欠点と多段式にする利点は、

①グローベッド同士を一段で接続した場合、濾材が通水の邪魔をするため、ポンプが水を吸うスピードに、水が集まるスピードが負けて、ポンプが空運転となったり、水が溢れる場合がある。

②グローベッド同士を一段で接続した場合、グローベッドの下部が常時水に浸かっている状態になるため、作物の根が腐ったり、成長が阻害される場合がある。

③グローベッド同士を一段で接続した場合、濾材が目詰まりを起こすまでの期間が短くなり、溢れる頻度が高くなる。

④グローベッドを二段にした場合、グローベッド単独で取り外せるため、メンテナンスが楽。

⑤グローベッドを二段にした場合、下段は貯水槽になるため、システム全体として、水の総量が多くなり、水質の急変が避けられる。

⑥蒸発散で水が減った場合、ポンプが空運転をしてしまうが、グローベッドを二段にした場合、下段に水があるためポンプが吸える状態にある水の量が多く保て、水位の急低下が避けられることから、ポンプの空運転も避けられる。

などです。

濾過能力を上げるため、濾材の槽をさらに中間に追加して、三段方式にすることも可能です。

二段式のグローベッドを、横に連結させた様子です。
写真では、散水用の塩ビ管が一本しかありませんが、最終的には、平行して、さらに一本追加して、グローベッド内の濾材にくまなく水がかかるようにします。

水中ポンプが吸い上げた水を、各グローベッドに散水するための塩ビ管を設置します。

塩ビ管には、小さな穴が開けてあるため、グローベッド上でシャワーのように水が注がれる仕組みです。

配管方法については、次回、別項でお話しします。

あとは、グローベッドに種を蒔くなり、苗を植えるなりします。

種を蒔いた場合は、発芽して、ある程度根が育つまでは、蒸発などで減少した水を足す目的もあわせて、ジョーロやホースでグローベッド内にこまめに水を撒いて下さい。

次回は、魚の飼育水をグローベッドまで導く、配管の工夫についてお話しします。

かにかに