14.アクアポニックスの分水筒の製作と防虫対策とは

実践的なアクアポニックスの製作

実は、飼育槽からグローベッドへ直接水を自然流下させるよりも、間に分水筒(ぶんすいとう)を挟むほうが、効率的です。

分水筒とは、水を多方向に分岐させる仕組みです。

魚飼育槽の水面よりも分水筒の水面を高くすることで、魚飼育槽の水面とグローベッド上の配管の高低差より、分水筒の水面と配管の高低差のほうが大きくなるため、流れが急になり、より水が流れやすくなります。

マンションの屋上などに、水道水のタンクが置かれているのと同じようなしくみです。

ポンプの力でマンションのすべての家庭に地面から水を持ち上げようとするとポンプに大きな負荷がかかりますが、一度まっすぐ上に上げて水を溜め、そこから先は自然流下させるのであれば、ポンプにかかる負荷は、まっすぐ持ち上げる力だけです。

筆者のアクアポニックスの場合も同様で、グローベッドから集められた水は、ポンプで汲み上げられ、分水筒に入れられます。

上の図は、分水筒により、水を多方向に分岐させる様子を、上から見た模式図です。
中央の太い線の四角が、分水筒です。

上の図のPマークから上にくねっと曲がって伸びている水の流れです。

紫の矢印が、ポンプに集水される水の流れになります。

上の例では、分水筒からは、上方のグローベッド、右側のグローベッド、魚飼育槽の3方向へ水が流れ出しています。青色の線と矢印です。

また、魚飼育槽からも、やはり上にあるグローベッドへ、水が流れています。

グローベッドは、二段式になっており、下段同士がそれぞれ連結され、紫色の矢印で集水された水が、ポンプ槽に戻ります。

横方向から分水筒を見た模式図です。
太い線の四角が分水筒です。
分水筒内の水面は、魚飼育槽やグローベッドより高くなっています。

グローベッドから集められた水は、ポンプで汲み上げられ、分水筒に入れられます。

分水筒から、多方向へ分けられて、水が流れ出します。

分水筒の水面が、魚飼育槽の水面や、グローベッドの表面より高くなっているため、水は水位差で、より優位に自然流下します。

分水筒には丈の高い容器が都合良いため、プラスチック製のゴミ箱を再利用しました。
穴を開け、バルブソケットを接続して、シリコンで水漏れを塞いでいます。
高さが足りない場合には、下に台を置き、分水筒の水面を、他よりも高くします。
赤い矢印が、ポンプから分水筒へ行く水の流れです。
その他の色の矢印が、グローベッドや魚飼育槽など多方向へ向かう水の流れです。
やはり、ゴミ箱を分水筒に再利用しました。
あまり見栄えが良くないので、もっと良い容器があれば、そちらを利用してください。
水色がグローベッドから集水され、ポンプで分水筒に汲み上げられる水の流れです。
赤い矢印は、分水筒から、多方向へ向かう水の流れです。
手前左や、左側のバルブソケットには、まだ塩ビ管が接続されていません。
水が流れ出さないよう、分水筒内側のバルブソケットに、継手をはめて、水を止めています。
水が零れないよう内側から、かさ上げしたエルボで栓をしています。
エルボではなく素直にキャップで蓋をしてしまうのが、本来の方法です。

水を流す際の簡単な工夫は以上ですが、作物を作る際にも簡単にできる工夫があります。

アクアポニックスでは、基本的に農薬は使いません。

屋外栽培のため、何も手を打たないと、作物にすぐ葉を食べる虫がついてしまいますので、葉物野菜を栽培する場合は、なるべく防虫ネットで覆いましょう。

方法は、ネットをかぶせるだけです。

以前、紹介した不織布です。
U字形のポールを立ててから、布をかけ、作物とグローベッドを覆っています。
種まきから、芽が出てすぐぐらいまでの、まだ葉が育たない期間は、ポールを使わず、単純に覆うだけでも大丈夫です。

畑のような広大な面積すべてをネットで覆うことは困難ですが、コンパクトなアクアポニックスシステムであれば、全体を覆えます。

アクアポニックスのメリットの一つです。

次回は、実践編のまとめの予定です。

かにかに